百合語りインタビュー2 大上満さん

個人による独断と偏見を重要視した百合作品紹介インタビューです。第2回は大上満さんです。今回は2時間超にわたるネットインタビューにご回答いただきありがとうございました。

今回も女性の方です。当初「あまり自信がない」とのことでしたが、たくさん話をうかがうことができました。


――まず大まかに年齢を教えてください。

三十代半ばです。


――百合を好きになったきっかけと、それからの百合趣味歴を教えてください。

百合ゲーで評判の高かったアカイイトをプレイしたことです。数日間の滞在の中で、少女達が出会いアカイイトを結んでいく……この人が大切だ、守りたいという気持ちが伝わってきてどのルートもものすごく感動しました。民俗学的な話もわかりやすく、ストーリーも大好きです。




この時の衝撃が忘れられず、百合というジャンルそのものにハマってアニメやマンガを片っ端から見始めました。

それ以前、百合という概念が存在しなかった段階だとブリーチの作者が書いた短編(「刻魔師 麗」)やエヴァのマヤ→リツコにほのかにときめいた思い出があります。セーラームーンの第一世代ではあるのですが、はるかとみちるの良さがわかったのは大人になってからですね。少女革命ウテナも成人してから視聴しました。



Zombiepowder 03 -
Zombiepowder 03 -
※「刻魔師 麗」はこの3巻に収録というレビューがありますが
筆者未確認です。ごめんなさい



(昔は主要人物が女の子しか出てこない小説を書いたりしていましたが、まだ思春期の頃は同性同士で恋愛をするという意識がありませんでした。)


――事前に「あまり読んでいなくて自信がない」とのことでしたが、かなり濃密なお話をいただけました

他の百合クラスタの方に比べれば全然読書量としては少ないと自分では思うのですが(汗)



――私は特に量だとは思ってません。二次創作中心でパッと名前が出てこない人も多いでしょうし。

そうでしたか。百合が好きという人は半端なくいろんな作品を知っていたりしますし、私はけっこう雑食なのでそれ以外のものに目を向けることが多くて密度もそんなに濃くはないと思っていました。


――それと、「百合の概念自体がわからなかった」という人は、昔はよくいましたね

創作のほうではまだ女性同士の関係を示す言葉がはっきりしていなかった記憶があります。

(*筆者注:「百合」の認知度向上は、おそらくは「マリみて」ブームの時代以降になると思います。アニメ版が2004年からなので、多分そのあたりから)




――大上さんにとっての百合の基準は何でしょうか

お互いにしっかり恋愛感情を持っているか、二人の間だけの特別な絆があること。(ブロマンス的なものも含めて)

(*筆者注:「ブロマンス」とは「恋人ではないけど親密な間柄の2人を見て感動する」という、文化みたいなものです。主に男性同士を見て使われております。詳しくはネットの百科事典を参照してください)


でも百合の定義はいまだ曖昧なので、世の人が言う広義の意味での百合もありだと思っています。いわゆるキャッキャウフフというやつですね。女性同士の醜い争いみたいなものを描かれるのが苦手なので、仲良く楽しくしているのを見るのは単純に気分が良いです。


――女性同士の争いといっても、純粋なライバル関係と、単に女同士を分断したいというのもありますね。「ライバル関係」についてはどう思われますか

ライバル百合もいいと思いますよ。一緒に競いあったり、高めあう二人もいいですよね。「自分以外の奴に負けたら許さない!!」みたいな感情もいいですね。ああでもこれはどちらかというと男同士っぽいですかね?でも女同士のそういう在り方も素敵だと思いますよ。その人(ライバル)が居たからここまで強くなれたみたいなのとか。


――そういうのを特に推す人もいるので、いいのではないでしょうか。それでは、最も推してる百合作品を1つ挙げてください

個人的にはブラックブラッドブラザーズ(通称BBB)というライトノベルに出てくるカーサというキャラクターを推してます。





BBBは百合作品というわけではないですが、このカーサは作中のアリスという女性吸血鬼を慕っております。彼女は非常に魅力的な名悪役なので単体で見ていても楽しいです。

他の女の子とも良い感じの絡み(エロ的な意味ではありません)や姉妹百合的な要素もあるので、百合好きな方はセンサーに引っかかるんじゃないでしょうか。

ただしラストは見方によってはヘテロととれなくもないので、あまり大きな声で推してはこれなかったんですよね今まで。そこだけはちょっと注意かなあと。

(私個人としてはそういう解釈はしていません。男女の特別な関係はすぐ恋愛と捉えられがちですが、彼女が主人公のジローに抱く感情はもっと複雑で単純に一言で言い表せないものだと思っています)

しかしながら百合要素抜きにしてもかなり面白いので一読の価値ありと思っております。


――失礼ながら「ブラックブラッドブラザーズ」は初めて知りました。アニメ化もされてるようですが、アニメから入るとかは大丈夫でしょうか?

アニメはあまりオススメしません。私は恐くて視聴していないのでハッキリとは言えないですけど……。BBBを楽しむならばやはり原作小説を読んでいただけたらと思います。何よりあの短さではカーサの百合要素はおそらく皆無に近いかと思われます。


――なるほど。そういう情報もありがたいです。ところで、百合は女性向け男性向けどっちだと思いますか

これは両方だと思います。アンケート結果を見てもだいたい半々という印象ですね。誰のどの作品によるかによっても変わってくるかなあという感じです。

しいて言うなら百合妊娠やγなど、性描写がはっきりあるポルノ要素の強い作品は男性向けかなあという感じはしますけど、それも絶対ではないですよね。


――これをうかがいたいのは「百合って女性/男性向けなんでしょ?」と壁は作って入ってくれない人がいるからなのですが、確かに性描写が強い作品になると男性にしか勧めにくいのはありますね。

私のようにバイセクシャルやレズビアンの女性ならば性描写強くてもOKかもですけど、ノンケ女性だとどうかなあ?と思ってしまいますね。百合というジャンルそのものは男女両方向けだとは思いますが。



――百合ジャンルから見たBL業界ってどう思いますか

ものすごく繁栄していますよね。同人誌はもちろんオリジナル一つとっても年齢は少年からおじさんまで、体型も細マッチョからゴリマッチョまでリアル系やファンタジー系などジャンルも多岐に渡りますし、女装あり、獣耳あり、グロありと様々です。市場が大きいのでマニアックなものも存在できるというところでしょうか。

百合も少しずつ多様性が出てきたなあと思いますが、理想としてはこのぐらいバリエーションが豊富ならなあと思ったりします。


――こうして意見をうかがうと、改めてBLって進んでいますね。百合に対する「繁栄が足りない」という不満も当然のように思えてきました。特に百合に対して「こういうのができてほしい!」みたいなのはありますか?

百合要素を引いた時にそれ以外の部分で面白いと思える作品がもっとあればなあと思うことはあります。あと年齢は偏っている気がしますね。大人の女性同士、30代から40代くらいの恋愛ものというのも見てみたいですね。


――百合にかぎらず、その年代を主人公にしたフィクションが少ないな~と思ったりもしますね。寂しい話です

寂しいですね。アラサーアラフォーが活躍するフィクションがもっと見たいです。



――長く続きながらも、否定的意見も多い「コミック百合姫」ですが、大上さんはどう思われますか

うーん私は深見真の小説連載が終わったのを機にもう購読をやめてしまったのですが、やめるまでの印象を言わせてもらうなら陰気でしたね。わりと同性同士の恋愛をネガティブに捉える作品が多かったような気がします。悲劇的な話も嫌いではないですが、そればかりだといやになってきますね。良くも悪くも話題性重視な傾向を感じました……まあ向こうさんも商売ですからね。

いくつか好きな作家さんや作品もあるのですが、全体的なクオリティもそれほど高いとは言えず、編集部の方針にも疑問が残ります。


――百合姫、月刊化して執筆陣も一部刷新して、最近は様子が変わった気もしますが、それはそれとして。昔「百合姫は読むのが疲れる」「時間がかかる」という人を見たりしましたね。今も「とりあえず百合姫読んどけ」みたいなムードは残っているのでうかがってみました。ありがとうございました。






――新たな百合作品を知る情報源にしている物・サイトがあれば教えてください

ツイッターです。百合クラスタをたくさんフォローしているので、親しいフォロワーさんから勧められたものや心にひっかかったものを見たり読んだりしています。


――なるほど。Twitterで好きな作品を何度も語ってれば手にとってくれるかもしれない…。SNS宣伝は侮れませんな。過去に何かそういったツテで手にとった作品なんかはあったりしますか?

ぱっと思い出すところだと「魔法少女特殊戦あすか」「悪魔のリドル」「ノノノ・ワールドエンド」「死神を食べた少女」「咲」「いらん子クエスト」「少女決戦オルギア」あたりですね。





――やっぱり「楽しそうだな~」と感じて?

感想や紹介を聞いて自分の好みにあっているかも?と感じた作品を購入してみる感じです。私の場合、戦う女の子や女の子を守る女の子が好きなのでそれ系を手に取ることが多いです。



――運悪く埋もれてしまっていると思う、おすすめの百合作品があれば教えてください

特撮になりますが牙狼(ガロ)の番外編、「桃幻の笛」ですね。

牙狼外伝 桃幻の笛 [Blu-ray] -
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敵側に女性同士のカップルが出てきます。また味方側の二人も妄想力次第では百合に見えます(笑)魔法やアクションが好きな方は楽しんで見られるんじゃないでしょうか。スピンオフ作品のせいか何故か百合好きに全然注目されないので、ここで紹介しておきます。


――女性同士のカップルが出てくるのですか。特撮って一応対象年齢は低めで、メインターゲットも男の子なんじゃないかと思うのですが、珍しいですね。

牙狼は大人も一緒に楽しめる特撮というコンセプトで監督が作ったらしいので、子供向けとは言い切れませんね。……というか深夜放送でしたし、女性の裸も出ますし直接ではないにしろレイプ描写があったりしてむしろ子供向け要素はどこ行った?という感じです(笑)余談ですが、子供向けだとゴーカイジャーのピンク(アイム)とイエロー(ルカ)はかなりイチャイチャしてました。




――なるほど。おそらくうちのブログに来られる方でご存知の方はほとんどいらっしゃらないと思いますので、そういう解説はありがたいです。(知ってたらごめんなさい。)とりあえず、「牙狼」はその番外編からの視聴でも大丈夫でしょうか?

本編を見た方がより楽しめると思いますが、おそらく単体でも視聴できるかと思います。そんなに話の筋も複雑ではないので。ファンタジー世界に馴染める方なら大丈夫ではないかと。(でもちょっと自信を持って言いきれないです、すみません)



――百合において個人的にNGな要素はありますか

自分もセクマイなので「背徳感」や「禁断」と言葉がつく作品は敬遠します。女同士と書いて上に[ゆるされない]とルビをふって読ませている作品を見た時はげんなりしました。同性愛嫌悪(ホモフォアビア)が強いものや、同性同士の関係性そのものを笑いのネタにするような作品も好きではないです。



――これは昨今の政治に直接訴える活動などもあって無くなっていくのかなとも思ってますが、少し前までは大手を(?)振っていましたね。先日私が見たアニメで「女の子同士は愛らしいけど、男同士は気持ち悪い」という思想による作品があったのですが、そういうのはどう思われますか?

忌憚なく言えば不愉快ですね。男同士は女同士に比べて嘲笑の対象になりやすい傾向にありますが、彼らはセクマイの同士だと考えているのでそういう扱いをされるとイラッとします。そもそも私はBLも好きなので、そのテの表現は好きではありません。



――最後に何を手に取ればいいのかわからな人に向けて、おすすめの百合作品を教えてください

天乃咲哉の「此花亭奇譚」です。心がほぐれるような優しい話の詰め合わせですし、絵柄も綺麗です。+女の子同士で恋愛している様子がソフトに描かれていているので入り口としては良いんじゃないでしょうか。




あとは水谷フーカの「この靴知りませんか」とかきづきあきらの「エビスさんとホテイさん」も個人的には読みやすかったです。




他には純文学作品になりますが、川端康成の「乙女の港」も読みやすいかと思います。いわゆるエスの話ですね。






以上どうもありがとうございました。まーた時間がかかってしまい、今後の内容の修正もしようかなあと思案中。

なお、『百合妊娠』へのリンクがまたしてもありませんが、この本は書影からしてアダルトなので、seesaaブログの「アダルト不可」規約によりリンクするのを控えております。

挙がった作品を眺めると、やっぱり傾向みたいなものがあるな~と、感動しております。こういうのを見るのは純粋に楽しいです。


本企画はあくまで客観性を排除し、主観的に良いものを広めあう目的によるものです。参考になりましたら幸いです。

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posted by おとなり at 23:17TrackBack(0)百合インタビュー

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